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藤井浩(助教授) 分子研リポート2001 | 分子科学研究所

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Academic year: 2018

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研究系及び研究施設の現状 217

藤 井   浩(助教授) (分子物質開発研究センター兼務)

A -1)専門領域:生物無機化学、物理化学

A -2)研究課題:

a) 酸化反応に関与する金属酵素反応中間体モデルの合成 b)磁気共鳴法による金属酵素の反応場の研究

c) ヘムオキシゲナーゼの酸素活性化機構の研究

d)アミノ酸の位置特異的ミューテーションによる酵素機能変換

A -3)研究活動の概略と主な成果

a) 生体内には,活性中心に金属イオンをもつ金属酵素と呼ばれる一群のタンパク質が存在する。これらの中で酸化反 応に関与する金属酵素は,その反応中に高酸化状態の反応中間体を生成する。この高酸化状態の反応中間体は,酵素 反応を制御するキーとなる中間体であるが,その不安定性のため詳細が明らかでないものが多い。これら金属酵素 の構造と機能の関わりを解明するため,そのモデル錯体の合成を行った。メシチル基をもつ新規配位子を用いて鉄 錯体を合成した結果,カテコールジオキシゲナーゼの活性中心と同じ構造を持つ錯体を初めて合成することができ た。その物性から,活性中心の構造と酵素反応の関わりを示すことができた。

b)自然界にある窒素や酸素などの小分子は,金属酵素により活性化され,利用される。活性中心の金属イオンに配位し た小分子は,配位する金属イオンの種類,配位子,構造によりその反応性を大きく変化させる。このような多様な反 応性を支配する電子構造因子がなにかを解明するため,磁気共鳴法により研究を行っている。金属イオンやそれに 配位した小分子を磁気共鳴法により直接観測して,電子構造と反応性の関わりを解明することを試みている。タン パク質由来の配位子の役割を解明するため,種々の物性の異なる配位子から銅1価C O錯体を合成し,その

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C u-NMR の測定を行った。その結果,アミン配位子とイミン配位子の電子供与性の違いを定量化することができた。また,同 じイミン配位子での5員環,6員環で大きな違いがあること,配位子のアニオン性が銅イオンの電子状態を大きく 変化させることがわかった。

c) 金属酵素が作る反応場の特色と機能との関わりを解明するため,ヘムオキシゲナーゼを題材にして研究を行ってい る。ヘムオキシゲナーゼは,肝臓,脾臓,脳などに多く存在し,ヘムを代謝する酵素である。肝臓,脾臓の本酵素は,胆 汁色素合成に関与し,脳に存在する本酵素は情報伝達に関与していると考えられている。本酵素の研究は,これら臓 器から単離される酵素量が少なく,その構造,反応など不明な点を多く残している。最近,本酵素は大腸菌により大 量発現することができるようになり,種々の物理化学的測定が可能になった。本研究では,大腸菌発現の可溶化酵素 と化学的に合成したヘム代謝中間体を用いて本酵素による酸素の活性化およびヘムの代謝機構の研究を行ってい る。ヘム近傍のアスパラギン酸をミューテーションすると,酸素活性化能を消失することを見いだした。種々の測定 の結果,これがプロトン供給経路の遮断によることが示された。

d)我々多くの動物は,生命エネルギー合成に酸素を利用しているが,酸素の乏しいところで生育する菌類やバクテリ アなどは窒素をエネルギー合成に利用している。これらの菌類やバクテリアは,酸素の代わりに硝酸イオンを電子 受容体として利用している。硝酸イオンは,菌体内のさまざまな金属酵素により亜硝酸イオン,一酸化窒素,亜酸化 窒素と還元されて,最終的に窒素になる。これらの菌類は,この反応過程で環境破壊につながる窒素酸化物を分解す

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218 研究系及び研究施設の現状

るため,環境保全の面で最近大きな注目を集めている。我々は,これら一連の酵素の中で,亜硝酸還元酵素に焦点を あて研究を行っている。菌体から本酵素を単離する研究は古くから行われているが,不明な点が多い。本研究では, 本酵素の機能発現機構を解明する目的で,ミオグロビンという酸素貯蔵タンパク質をミューテーションにより亜硝 酸還元酵素へ機能変換することを行っている。

B -1) 学術論文

H. FUJII, X. ZHANG, T. TOMITA, M. IKEDA-SAITO and T. YOSHIDA, “A Role for Highly Conserved Carboxylate, Aspartate-140, in Oxygen Activation and Heme Degradation by Heme Oxygenase-1,” J. Am. Chem. Soc. 123, 6475 (2001).

B -4) 招待講演

藤井 浩 , 「ヘムオキシゲナーゼによる酸素活性化機構の研究」, 第 79回日本化学会春期年会 , 甲南大学 , 神戸 , 2001年 3 月 .

C ) 研究活動の課題と展望

これまで生体内の金属酵素の構造と機能の関わりを,酵素反応中間体の電子構造から研究したきた。金属酵素の機能をよ り深く理解するためには,反応中間体の電子状態だけでなく,それを取り囲むタンパク質の反応場の機能を解明することも重 要であると考える。これまでの基礎研究で取得した知見や手法を活用し,酵素タンパクのつくる反応場の特質と反応性の関 係を解明していきたいと考える。さらにこれらの研究成果を基礎に,遺伝子組み替えによるアミノ酸置換の手法を用いて,金 属酵素の機能変換および新規金属酵素の開発を行いたい。

参照

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